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2023年4月の新刊

『シポックさいごのえもの』
いとうひろし・作

本文文字も絵も、すべて切り絵とコラージュで作成。緻密なタッチに驚きます

せかいじゅうをとびまわり、
けだもの、さかな、とり、むしのしっぽというしっぽをくいつくしてきた
かいちょうシポック。
こんどは、おおへびのオデカのしっぽをたいらげにおんまけやまにやってきた。

シポックもつよいが、オデカもつよい!

三日三晩たたかって、とうとうオデカがこうさんした。
だけど、シポックはこまった。
おおへびオデカのしっぽは、いったいどこからか……。
 
 
「おさるシリーズ」「ルラルさんシリーズ」「ごきげんなすてごシリーズ」など数々の人気シリーズの作者・いとうひろしさんが、デビューする前に作成した作品を今、新刊の絵本として刊行します。
緻密なコラージュのイラストのシャープな作風が新鮮です。
一方、デビュー前の20歳代だった作者の物語の完成度に驚かされます。

いとうひろしさんの傑作が、40年の眠りから目覚め、ついに刊行!

[著者略歴]
いとうひろし

1957年、東京に生まれる。早稲田大学教育学部卒業。大学在学中より創作を始め、絵本『みんながおしゃべりはじめるぞ』(童心社のちに絵本館で刊行)でデビュー。
『シポックさいごのえもの』は、デビューより前に作成した作品である。
主な作品に『ルラルさんのにわ』(絵本にっぽん賞)、『くもくん』(日本絵本賞読者賞)『バンバンバンバンバンソウコウ』(以上ポプラ社)、『おさるのまいにち』『おさるはおさる』(ともに路傍の石幼少年文学賞)、『おさるになるひ』(産経児童出版文化賞、IBBYオナーリスト選出)、『だいじょうぶだいじょうぶ』(講談社出版文化賞受賞)『おさるのもり』(野間児童文芸賞)(以上講談社)、『マンホールからこんにちは』(児童文芸新人賞受賞)『ごきげんなすてご』(以上徳間書店)、『かせいじんのおねがい』(童心社)他多数がある。
 

本体価格|1700円+税
判型|B5変型判(縦250ミリ×横183ミリ)
ページ数|32ページ 
オールカラー

あとがきより


この『シポックさいごのえもの』は、今から40年ほど前に作られた絵本です。でも、もっと正確に言うと、さらにその5年ほど前、大学生の頃に作った絵本を描き直したものです。だけど、その時直したのは絵だけであって、全体的な構成や文章などはほとんど変わっていません。
(今回、しっぽずかんのイラストだけは新たに描き加えました。)

 
その頃の私は、アルバイトをしながら絵本を作り、それを出版社に持ち込むという生活を続けていました。でもこの絵本も、他の自作の絵本と同じように、まったく評価してもらえませんでした。そして、私の家族と親しい友人以外の人たちの目には触れることないまま、40年が過ぎました。

その40年の間に、私は絵本を作ることが仕事となり、今までに120冊あまりの本を作ってきました。その中には『ルラルさんのにわ』のように学生の時に作った本もあります。
 
『シポックさいごのえもの』も出版をめざして、もう一度描き直そうとしたことがあります。
(その時に書いたシポックのラフが今も残っています。)
そのまま描き直していれば、それまでの経験をいかして、より洗練された絵本として仕上げることができたと思います。それでも書き直せなかったのは、元のシポックの絵に、かけがえのないものを感じてしまったからです。
 
シポックの絵には、自分の作る絵本は面白がってもらえなのかもしれないと思いながら、どうしても描かずにはいられないかった、あの頃の自分がいるような気がします。その頃の気持ちが、あそこまで執拗に作り込んだ絵になったのだと思います。空間や時間を平面上に表す工夫もちゃんと見てとれ、若さゆえの硬さを持ったこの絵を描き直すことはできませんでした。

40年前には見てもらえませんでしたが、今回めくるむとの出会いから、昔のままのシポックを多くの人に見てもらうことができました。みなさんに面白がってもらえたら、40年前の私もきっと飛び上がって喜ぶと思います
 

いとうひろし